教育

教育格差とは、生まれ育った環境により受けることのできる教育に格差が生まれることです。中国では戸籍制度による都市部と農村部の教育格差が深刻な問題となり、そして少数民族への教育優遇政策と少数民族地域での過酷な教育環境の間に秘めている問題も言うまでもなく厳しいです。日本は先進国の中で相対貧困率が比較的高く、貧困が原因で質の高い教育を受けることが難しく、依然学歴を重視する日本では良い職につけないことで生涯賃金が低く、その結果は貧困から抜け出せない、という貧困が貧困をうむ負の循環問題を注目しなければなりません。
教育分科会は、日本と中国における教育問題だけではなく、グローバル社会における世界共通の問題を取り上げながら、教育格差を中心に議論を進めていきたいと考えております。教育格差を中心に、日本人、中国人、在日中国人、在日外国人、そして中国にいる日本人、外国人、私達の周りにいる人々、私達普段の生活から離れている人々、身近な問題から未来の問題まで、「人間」や人間をめぐる問題に焦点を当て、意見交換して解決策まで探っていきたいと思っております。
働き方と社会

就職というのは卒業後の進路として大きな選択肢のひとつです。特に学歴社会を生きる日本・中国両国の大学生・大学院生にとって、自分がどの大学・大学院に所属しているのかというのは就職に大きな影響を及ぼし、特に就職活動の際には大きな障壁にもアドバンテージにもなりうります。このように、学歴というのは大学・大学院卒業後の進路や企業内などでの社会的地位にも大きく関わるものであろうと思います。
「働き方と社会分科会」では、現代社会を取り巻く就職活動や労働にまつわる問題を日中両国の学生の目線から議論していこうと考えています。特に、このように大学生・大学院生の卒業後のキャリアや働き方に関する事象を、大学生・大学・企業・子供や障がいをもつ方などの社会的弱者の視点から分析していきます。またその過程で、近年ポピュラーになりつつある新たな働き方にも目を向けていきます。特にアナウンサーなどの職業でポピュラーになってきている働き方の一つであるフリーランス等近年のIT技術の発展で可能になっていた働き方は、これからの働き方を考える上で重要な要素となります。そのような要素にも注目しつつ、学生の目線から就職・労働問題の解決策を模索していきたいです。
メディア

突然ですが、「監視カメラ」と「防犯カメラ」とこの二つの言葉を並べたときに皆さんはそれぞれにどのような印象を受けますか?おそらく前者の方に良いイメージを抱く人は少ないでしょう。中国の大都市では現在至る所にカメラが設置されていますが、日本のメディアの大半はこれらを「監視カメラ」と形容していますし、実際に多くの方が「監視国家中国」を象徴するものの一つとしてこれを挙げるのではないでしょうか。中国のカメラは監視カメラ、日本の街中にあるカメラは防犯カメラ、人に与える印象は言葉一つでいかようにも変えることができ、そして私たちは外から与えられた情報を無意識のうちに内在化しています。実は中国では誘拐事件が毎年相当件数発生しており、カメラの存在はこうした社会状況を踏まえれば決してマイナスのものではありません。
このように、メディアというものはどうしてもその文化圏のイデオロギーや国家の立場を投影するようなものになってしまい、その結果特定の国へのネガティブキャンペーンに様変わりしてしまうことも少なくありません。そしてそれを意識して自国のニュースを見ている人はそれほど多くないでしょう。
また、現在日本では伝統メディアに対するメディア懐疑論が浮上してきていますが、実は自身の価値観という名のフィルターにかけて都合よく情報を選別してはいないでしょうか。結局私たちは無意識のうちにイデオロギーや自身の価値観の枠組みに縛られて、先入観でもって情報を取捨選択しているのかもしれません。
これらとどう向き合っていくべきか、世論との相互関係を捉えつつ、伝統メディアによる報道、SNS、教科書などの様々なメディアが日中関係ひいては社会全体に与える影響を分析しつつ、メディアの新たな可能性について議論していきたいと思います。
東アジアにおける社会問題

世界各地で昔も今も絶え間なく起きている社会問題。しかし、一口に社会問題といってもそのジャンルは多岐に渡ります。アメリカを例に挙げれば、2019年に発生した大量殺人事件の件数は70年代以降では国内過去最多を記録し、そのうちの約8割が銃撃事件でした。日本の場合であれば、65歳以上が人口の約3割を占める超高齢社会がこれから更に顕著になり、これは世界のどの国と比べても群を抜く比率になっています。これらのケースはどれも「社会問題」として分類されますが、国や地域によって顕在化する問題、またその深刻さの度合いには違いが多く見られます。その要因の一つとして、これらの問題が各地域に存在する社会的慣習やそこに住む人々の価値観と密接に関係していることが挙げられるのではないでしょうか。
本分科会では、個人レベルから東アジアという地域レベルまで、様々な視点から日中両国が直面する社会問題について検証、分析していきたいと考えています。そこから見えてくる人々の傾向や価値基準を比較しながら、日本と中国が持つこれからの新しい可能性について議論していきます。
インターネット

インターネットを媒介とするサブカルチャーの出現は、現在の社会において重要な文化現象の一つになっています。今や現代人とは切っても切り離せないものとなったインターネット、この新しい文化形態は若者をはじめとする多くの層の価値観と考え方の形成に影響を与えています。インターネット上に登場する憧れの人を真似してみたり、流行りだから遠くても行ってみよう、高くても買ってみようと思ったことは誰にでもあるはずです。その心理やそこから派生して起こる社会現象には非常に興味深いものがあり、その存在感は昔とは比べ物にならないほど大きなものになっています。
本分科会では、主に近年急成長しているネットサブカルチャーについて、日本と中国と両方の視点から議論していきます。具体的には、漫画、アニメ、ゲームから始まり、YouTubeやTikTokなどの配信、TwitterやWeiboのようなソーシャルメディアに至るまで様々な分野を視野にいれています。そして、これらをはじめとするインターネット上での動きについて、日本と中国とではどれだけ違いがあるのかを中国側参加者とのコミュニケーションを通じて身近に感じていければと思っています。また、両国間におけるサブカルチャーの相互影響や、サブカルチャーによる経済効果、これからの可能性などについても模索していきたいと思います。
ヘルスケア

近年、経済発展による経済的余裕から、日中両国においてヘルスケアにより多くのお金をかけられるようになりました。
しかし、ヘルスケアへの関心が広がっている一方で、高齢化社会による介護問題やストレス社会を起因とした、生活習慣病をはじめとする多くの問題が浮上していることも事実です。本分科会では、主に食事、医療制度、生活サイクル、の3つの切り口から議論を行います。
①食事:両国の食生活とそこから発生する問題について考えます。
②医療制度:両国の保険制度と介護支援の状況を踏まえ、将来の展望について考えます。
③生活サイクル:他国の例を参考にしつつ、健康的な生活を送るために私たちのライフスタイルをどう変えていけるのかを議論していきます。
それに加え、健康食品詐欺をはじめとする時事問題についても取り上げ、積極的に意見交換ができればと思っております。
参考のために上記の例を挙げましたが、分科会メンバーの関心や専攻等に合わせてフレキシブルに議題設定をする予定です。また本年度の日中学生会議は中国にて開催されるため、現地でのフィールドワーク等を通して文化の違いとそこから生まれる日中のヘルスケアに対する考え方の違いも見つけていければと思っています。
ヘルスケア問題はたくさんの学問分野にまたがっているので、様々なバックグラウンドや専攻の異なるメンバーで議論したいと考えています。文系・理系問わずどなたでも大歓迎です!
国際関係と外交

日中の「外交・国際関係」というと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。東シナ海の領土を巡る紛争や、南シナ海での中国の海洋進出かもしれません。もしくは、日中共同宣言(1972年)や日中平和友好条約(1978年)といった歴史的事象かもしれません。
しかし、両国の「対朝鮮半島(韓半島)外交政策」も、決して忘れてならない要素の一つです。朝鮮半島(韓半島)は「緩衝地帯」として両国が歴史的に利権を求めて対立を続けた地域で、東アジアの平和と安定を考える上で無視できません。「緩衝地帯」という事実から日中両国の対朝鮮半島政策を考えることは日中両国の外交や国際関係を考えるだけでなく、東アジアの平和と安定を追求することにも不可欠です。
そこで、本分科会では「両国の対朝鮮半島政策」を主要議題の一つとして位置づけ、これを議論します。
議論には日本史や世界史の知識が求められることから、参加者の皆様には事前に高校の教科書を復習いただきますよう、お願いいたします。 また、日中両国や朝鮮半島の外交や安全保障についても、日頃のニュースに関心を寄せておいていただけると幸いです。